ぷにぷにパイレーツ

公演案内

第6回公演「ぷにぷに号泣祭り」

           ~ああ、どうしよう 涙が止まらない‥ 

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2009年6月14日(日)

開演時間:14時/18時(開場は開演の30分前)

 

会場:アトリエ無現

〒154-0003 東京都世田谷区野沢2-26-22川又ビルB1

 

  

 

 

   キャスト

作・演出・出演:石崎一気

パントマイム:ロウミン

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  公演コンセプト

第6回公演は、泣ける作品ばかり取り揃えてみました。

“ぷにぷにパイレーツ”は、これまで人間の醜い部分を抉り出す作風を武器に、皮肉でブラックな社会風刺劇を中心に上演してきました。

しかしそれでは、人間の片側しか表現出来ていません。

そこで今回は、人間の美しい部分、純粋な部分にスポットを当てることにしました。

日々失われていくピュアだった自分‥、輝いていた時間‥、真実の愛‥。

本当に綺麗なものだけを抽出して、皆さんにお目に掛けたいと思っています。

 

今回は、注目の女性パントマイマー、ロウミンさんをゲストにお迎えします。

究極の身体表現もお楽しみ頂けます。

 

 

☆「夢で会えたら」

”ぷにぷに号泣祭り”のオープニングとして、「夢で会えたら」という作品を上演しました。

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ストーリーは次のようなものです。

”今日は、一人息子の誕生日。

父は、愛息のために贈り物を購入する。

しかし、父には、その贈り物を渡せない事情があった。

かつて犯した犯罪のため、息子に会うことが出来なくなっていたのである。

渡せないことを知りながらも、贈り物を買わずにはいられない父。

やがて彼は、悲しみの中、酔いつぶれていく。

この父には、決して救いは訪れない。

 

しかし、夢の中だけは違う!

夢の中なら、息子に会い、贈り物を渡し、幸せを感じることが出来る。

だから、この男の眠りを覚まさないで欲しい‥”

 

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僕は、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」という作品が大好きです。

これに匹敵するとは言いませんが、同じような趣向の話を書きたいと常々思っていました。

ですから、「夢で会えたら」には、「賢者の贈り物」の中の単語や文章が、随所に散りばめられているんですよ。

ストーリーは全然違いますけど、その精神は同じであると感じ取って下さったお客様も何人かいらっしゃいました。

「号泣するというより、その喪失感に茫然とした」というご意見も、多数寄せられました。

また、女性を中心に、「父の息子を思う孤高の姿がカッコよかった」というお褒めの言葉も沢山頂戴しました。

一方、かなり文学的で、劇構造も複雑で凝っているので、分かりにくいと感じた方もいらっしゃったようです。

見る方の感性によって反応が分かれる作品だったようです。

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役柄的には、刑務所帰りの酔っ払いですから、僕はやりやすく感じました。

最初はただガラが悪く怖いだけのオヤジが、息子のことを思ううちに徐々に弱弱しく悲しい存在になっていくという演技は、やり甲斐を感じましたね。

上手く出来たかどうかは自分では分かりません。

ただ、舞台写真を見る限り、僕に魂が乗り移って、悲しみが全身から放たれているように思いました(写真がお上手なだけかもしれませんが)。

作品中にドラマチックに心理が動いていく作品って良いですね。

今後も挑戦していきたいと思っています。

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失敗もあるんです。

衣装として着用したベストは、作業着の専門店で1500円で購入しました。

本当に工事をする人が着るものなので、事故に合わないように暗いところで蛍光色に光る素材だったんですね。

ですから、暗転中に舞台に出て行くと、ベストが光って凄く目立ったんだそうです。

「これじゃあ、暗転の意味がないですね」って、手伝ってくれたスタッフに突っ込まれてしまいました。

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「ぷにぷに号泣祭り」で上演した3本の作品の中で、僕は「夢で会えたら」が一番好きです。

最も改稿を重ね、長さも原稿用紙45枚程度の中篇になってしまいました。

上演時間も、約30分でした。

「号泣祭り」というタイトルの公演でしたけど、本当のテーマは「優しさ」です。

その「優しさ」について、今回、一番深く掘り下げられた作品だと思っています。

このテーマについては、今後も折を見て、また挑戦していきたいですね。

 

 

☆「子守唄」

ロウミンさんは、「舞☆夢☆踏」でハッピー吉沢氏に師事し、ポーリッシュ(ポーランド)マイムをテリー・プレス氏、僕の師でもあるJIDAI氏に学んだ、注目の女性パントマイマーです。主に劇場やライブハウスなどで活動し、大道芸にも時折出演されています。

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「子守唄」は、こんなストーリーです。

泥棒が忍び込んだ部屋で、赤ちゃんが泣き出します。赤ちゃんを泣き止ませようと、泥棒はあの手この手であやしていきますが・・・。

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「子守唄」は、僕がロウミンさんにリクエストして上演して頂きました。

実は、僕が最初に見たロウミンさんの作品が、「子守唄」だったのです。

それを見るまでは、パントマイムと言えば、演者がピエロの格好をして、不思議なロープやボール、風船に翻弄される軽いコメディの印象しかありませんでした。

しかし、ロウミンさんの作品は全く違ったのです。

詩情あふれる静かで優しいアーティスティックなものでした。

たちまち僕は、ロウミン・ワールドに魅了され、大ファンになってしまいました。

そして、まるで追っかけのように、可能な限りロウミンさんの舞台は見るように努めてきました。

いつかチャンスがあれば、”ぷにぷにパイレーツ”の舞台にご出演頂きたいとも思い続けてきました。

特に「ぷにぷに号泣祭り」の雰囲気とロウミンさんの作品は凄く合うと思ったので、良いチャンスとばかりに、今回、ご出演をお願いしたのです。

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今回改めてロウミンさんの作品を拝見しましたが、やっぱり素晴らしいですね!

まず、その肉体コントロール見事さといったら、どうでしょう!

僕もパントマイムを少しかじっているから分かるのですが、驚異的です。

全身の各部位を完全に制御しています。

柔らかい身のこなしで、僕らには絶対真似できない凄い姿勢を楽々取られるんです。

また、ダンスもお得意なのでしょう。

リズム感溢れる軽やかな動きも、見事の一言に尽きます。

一度魅了されてしまうと、一瞬たりとも目を離すことが出来なくなってしまいます。

僕は、ロウミンさんが、わが国ナンバーワンの女性パントマイムアーティストであると確信しています(そうでなければ、出演をお願いしません)。

そんな方と同じ舞台に立てるなんて、光栄なことです。

ロウミンさん目当てで「ぷにぷに号泣祭り」にお越し頂いた方も沢山いらっしゃったようですよ。

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僕が「子守唄」をリクエストした理由は単純です。

途中、赤ちゃんが号泣するシーンがたっぷりあるからです。

とても心優しい暖かい作品ですよね。

しかも、泥棒と赤ちゃんの2役早変わりを何度も繰り返します。

それなのに、今、どちらの役を演じていて、その人がどんなキャラクターで、現在の心境がどうなのかが、一切混乱なく伝わってくるのです。

そして、動きの美しさったら、どうですか!

どのシーンを見ても、まるで彫刻か絵画のように、美しいのです。

特に、ラストシーン!

まさに芸術です。

見ていて楽しく、見終わって美しさが網膜に焼きつく‥、そんな大傑作だと思います。

 

 

☆「日記」

ご覧になっても、なかなかお気付きにならない思いますが、非常に実験的な作品です。

ストーリーは、あってないようなものです。

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”結婚して僅か3年で亡くなった妻の日記が、偶然見つかった。その日記に書かれていた内容とは?妻が残していった思いとは?”

妻の日記を、夫が淡々と読み上げるだけのお芝居です。

 

この作品のコンセプトは、とにかく静かで、地味な作品を作ってみたいというものでした。

動きも、感情の起伏も最小限に抑え、可能な限り、一般的な演劇的表現から遠ざけたものにしてみたかったのです。

声の質は微妙に変化させますが、その大きさは一切変えません。

手の振りも、日記を読む動き以外は、極力使いません。

足も、ラストシーンで一歩前に出るだけで、それ以外は固定したままです。

これ以上はないというぐらい、ストイックな演出だと思います。

前衛のちょっと手前ぐらいの、かなり過激な手法です。

”外連(けれん)”を極限まで排除した演出が、どこまで一般のお客様に通用するかという冒険を行ってみたのです。

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しかし、その過激な演出にお気付きになる方は、全くと言って良いほど、いらっしゃいませんでした。

あまりにも地味な作品なので、「ほとんどのお客さんが寝てしまうかな」なんて覚悟していましたが、そんなこともなく、皆さん凄く集中してご覧頂いていたようです。

お客様の凄い圧力が、舞台上の僕に押し寄せてきたのがはっきり分かったぐらいです。

演者が集中して丁寧に演じれば、難解な演出でも十分通用するということなんでしょうね。

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演出は実験的でしたが、内容は実にオーソドックスなものです。

冒頭で、妻が死ぬことを明かし、あとはその死に向ってゆっくりと進んでいくというものです。

「号泣祭り」ですから多少は泣かせようというセリフも入れ込んでおきましたが、それも最小限に抑えてあります。

なるべく普遍性を高めて、僕の発したいメッセージを純化させたかったのです。

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脚本に関しては、賛否両論、綺麗に分かれましたね。

「涙が止まらなかった」という方もいらっしゃれば、「意外なことが何も起こらないので、つまらない」と不満を覚えた方もいらっしゃいました。

でも、僕はそれで良い、いや、それが良いと思っています。

「作品は、見る人を映す鏡たれ」というのが、僕の信条です。

感動や主張を押し付けるのではなく、見る人なりに何かを掴み取って頂ければ十分です。

「日記」を上演したことで、今後、心にさざ波を起こすような作風を自分の特長にしていきたいと思いました。

勿論、賑やかで分かりやすいコントを止めるつもりはありません。

でも、その合間に、ストイックで静かで繊細な作品も混ぜていくつもりです。

そういった意味で、「日記」は、ぷにぷにパイレーツの新たなスタート地点と呼べるかもしれません。

 

動きは少ない作品ですが、演じるのは体力的にとても大変なんですよ。

下っ腹にぐっと力を入れ、足を踏ん張らなくてはいけません。

(その分、上半身の力は抜ききる必要があります)

作品の後半は、足の裏が痛くて仕方ありません。

夜の部の最後の方は、踵が痛くて悲鳴を上げそうでした。

ロウミンさんの「落書きダイスキ!」の最中、ずっと足の裏を揉んでほぐしていたんですよ。

能の世界でも、”クセ”という動かないで感情表現する所が一番大変ということですが、まさにそんな感じでした。

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☆「落書きダイスキ!」

今回が初演となる、ロウミンさん入魂の新作です。

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ストーリーはこんな感じです。

壁にチョークで落書きをすると、描いたものが本物になっていきます。

色々なものを描いて遊んでいましたが、突然天候が悪くなり・・・。

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この作品も、お客様から大好評でしたね。

アンケートの人気投票でも、高い評価を受けていました。

子ども時代の一人で遊ぶ寂しさや、孤独に夢想する世界観が上手く表現されていたので、見ていて童心に戻った方も多かったようです。

ロウミンさんの寂しさの表現は絶品です。

大袈裟な悲しみではなく、ちょっとした切なさが実に素晴らしいのです。

胸がキュンとして、目頭が熱くなってきます。

なんでこんなに悲しいのに優しい気持ちになれるのでしょう?

「落書きダイスキ!」も、見ている時以上に、見終わってからどんどん良くなっていくタイプの作品ですね。

ロウミンさんの作品が見られるのは、本当に幸せなことです。

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実は、この作品、昼の部と夜の部では、大きな変更がありました。

あるシーンで、昼は飴をなめていたのに、夜はジュースになっていました。

なぜ変更したのか、今度聞いてみたいと思っています。

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☆「You’re Only Lolely」

実験的な作品を2本上演しましたので、最後はどなたにでも分かりやすい作品をやることにしました。

前年上演し好評だった「ひまわり」という作品のテイストを生かし、失われし夏の日の恋の物語を書いてみました。

ストーリーをグイグイ進め、ラストにどんでん返し的なオチをはっきりと付けて、皆さんにご満足頂けるように工夫してみました。

 

粗筋をご紹介しましょう。

”舞台は、かつて海水浴場として栄えたことのある、海辺の田舎町。10年前、学生達が開局したミニFM局で人気DJだった男が、10年振りにその場所を訪れ、久々にDJを行います。そこで男が見つけたものとは‥?”

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お陰さまで、この作品は評判が良かったですね。

「ぷにぷに号泣祭り」で上演した一人芝居の中では断トツの人気でした。

「DJがカッコよかった」とか、「青春時代が蘇った」などなど、お褒めの言葉を沢山頂戴しました。

やっぱり、皆さん、夢のあるお話がお好きなんですね。

(あとの2本は救いのない重く暗い話だったので、それが嫌だったという意見が多かったんですよ)

今後の公演でも、こういう希望を持てるお話は必須ですね。

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この作品で、僕は思い切って本格的なパントマイムに挑戦してみました。

なかなか難しいですね。

パントマイムをやっていることに気付いていない方もいらっしゃいました(セリフを沢山喋るからでしょうか?)。

でも、こうやって舞台に掛けることで、僕もいっぱいパントマイムを練習しますから、今後も続けていきたいと思っています。

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終演後、沢山のお客様からこんな質問を受けました。

「この後、ケンはどうなるの?」「続編はいつやるの?」etc‥。

DJケンの今後は、どうぞ、ご覧になった方ご自身で自由にお決めになって下さい。

上演が終った時点で、その作品はお客様のものになるのですから‥。

 

 

☆「赤毛のアン」

号泣祭り 164.jpg落語家の立川らく太君が、スタッフとして「ぷにぷに号泣祭り」をお手伝いしてくれました。

せっかく時間を割いて来てくれるのだから、簡単な出演シーンを作ることにしました。

そこで、いつもアンコールとして上演しているナンセンス・コントに出て貰うことにしたのです。

毎回アンコールは、極力下らない内容にし、「アンケートに協力してください」というメッセージさえ伝われば良いというものです。

でも、アンコール・コントは、常に大評判なんですよ。

「なまはげ様」、「きっと来る2」など、いまだに話題になるほどの人気です。

皆さん、軽く笑える作品が大好きでいらっしゃるんですね。

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「赤毛のアン」は、二人コントです。

主役のアンはらく太君が演じ、僕がケイト役を務めました。

らく太君は、本当に下らないコントにもかかわらず、相当気合が入っていました。

このためだけにスカートまで買ってきたぐらいです(丁度いいサイズを、良く見つけましたよね)。

また、アンコール史上初めて、稽古を行いました。

僕は「当日合わせれば十分じゃない?」と言っていたんですが、らく太君が「是非とも事前に稽古をお願いします」と熱意を示したのです。

らく太君のやる気、素晴らしいですね。

実際、彼の熱演もあって、「赤毛のアン」は大いに盛り上がりました。

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全編しっとりした「ぷにぷに号泣祭り」の後に、女装してバカなダンスを繰り広げるのは大変な勇気が必要です。

客席がドン引きになるのは確実ですから。

しかし、らく太君は、それを気迫で押しのけました。

とんでもなくおバカで下らないダンスを、精一杯披露してくれました。

これは、簡単なことではありませんよ。

実に見事でした。

らく太君は、ナンセンス・コントの天才ですね。

着実に力を付けているらく太君ですから、次回は感動巨編に出演して頂きましょう!

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また、この作品で飛び入り的にロウミンさんに登場して頂き、”壁”の演技を見せて頂きました。

これも大変な盛り上がりになりましたね。

完全なアドリブで僕が無茶振りするのに当惑するロウミンさんの姿は、本当に面白かったと思います。

突然無理なお願いをして、ロウミンさん、ごめんなさい。

お客様が喜んで下さったのに免じて、許して下さい。

でも、”壁”の演技は、本当に見事でしたよ。

ご覧になった皆さんは、ラッキーだったと思います。

 

「赤毛のアン」のラストで、いつものようにアフロのカツラが取れるギャグを入れました。

今回も、まったく受けませんでしたね。

見事な白け具合でした。

もうこうなったら、受けるまでカツラ・ギャグを続けます!

見たくないと思ったら、早めに笑っておいた方が良いと思いますよ。

 

「赤毛のアン」を上演した効果もあって、今回もアンケートの回収率が、限りなく100%に近いものとなりました。

皆様、ご協力ありがとうございました。

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