第11回公演「ぷちぷちパイレーツ "STOP!温暖化"~社会風刺コント集」
●第11回公演「ぷちぷちパイレーツ ”STOP!温暖化”~社会風刺コント集」
*公演日程: 2010年11月28日(日)
*開演時間: 14:00(マチネ) & 18:00(ソワレ) *会場: アトリエ無現(田園都市線・駒沢大学駅より徒歩7分)
世田谷区野沢2-26-22川又ビルB1
*作・演出・制作・出演: 石崎一気
*公演コンセプト
皆さんは、ご記憶でしょうか?2010年の夏は暑い日が続き、各地で最高気温の記録が更新され、多くの人が熱中症で亡くなりました。年々、冬は寒い日が減り、春には桜の開花が早まり、秋の紅葉は遅くなっています。日本の平均気温は、この100年間で約1℃上昇しました(これは世界の平均値である0.74度を大きく上回っています)。
海水面の平均水位は、20世紀の間に17㎝も高くなりました。サンゴ礁の島国、ツバルでは、海岸浸食のほかに、畑に海水が入り込み、作物に被害が出始めています。自給自足の生活をしているツバル人は、島が沈むことは勿論、食べ物がなくなってしまうことも心配しています。
近年、アメリカは超大型のハリケーンに見舞われ、ヨーロッパでは広い範囲で熱波・洪水に襲われました。多くの氷河は後退し、万年雪や北極の氷もどんどん溶けています。
こうした地球温暖化は、温室効果ガス、特にCO2が増えすぎて、大気中に熱がこもってしまうのが主な原因と言われています。
私たち一人ひとりがCO2排出量を減らす努力をしなければ、着実に温室効果ガスは増え続け、世界の気温は上昇し、人類は滅亡への道を歩んでいくのです。
世界は今、“地球温暖化”に対して、立ち向かおうとしています。
2005年2月16日には「京都議定書」が発効し、日本は2012年
までに、温室効果ガス排出量を、1990年に比べて6%削減すること
を義務付けられました。また、昨年9月、鳩山総理大臣がニューヨー
クの国連気候変動サミットにおいて、我が国の目標として、温室効果
ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減することを表明
しました。
このような現状を受けて、私ども“劇団ぷにぷにパイレーツ”は、
地球温暖化を止めるための新たなチャレンジをスタートさせました。
その嚆矢とも言えるのが、本公演です。
ささやかな照明・音響の利用にとどめ、電力消費を極力抑えた、
ECOなエンタテインメント・スタイル!小道具を一切使わず、
徹底的に無駄を排したECOアクション!新たに衣装を購入・作成
しないで、すでに持っている洋服をリサイクル活用!滅多に稽古を
しないことで、移動によるCO2マイレージを大幅に削減!
動きの激しい演技を減らし、俳優の呼吸量を可能な限りカット!
勿論、公演パンフレットも再生紙を使用しています。
上演作品の内容も、オフィスやご家庭で実践できるCO2削減に向け
た具体的な行動を「4つのチャレンジ(作品)」として提案し、その
行動の実践を、広くお客様に呼び掛けるものとなっています。
地球と日本の環境を守り、未来の子供たちに引き継いでいくために、
“劇団ぷにぷにパイレーツ”は、演劇活動を通して、地球温暖化防止
に全力で取り組んで参ります。
*作品解説
●「ノーモア納豆」
内田諭、塩沼千雅出演の社会風刺コントです。
公演の幕開けを飾る作品として、上演しました。
最近、環境保護団体を名乗るグループが、その主旨のもと、日本の漁船等に対し暴力行為に及ぶニュースが頻繁に届いてきます。
そのパロディとして、某海外のNGO団体が、日本人に納豆を食べさせないよう、武力行使してくるという物語です。
なぜ納豆を食べてはいけないかといえば、それは、納豆は知能が高いからなのです…。
僕自身は、上手く世相を切り取った、痛烈な社会風刺作品に仕上がったと思っています。
特に、弱腰の日本外交に対する批判を、面白可笑しく落ちに盛り込めたのではないかと自負しています。
実際、最近のニュースに詳しいであろうお客様は、随所に散りばめてある細かい部分にも、クスクス笑いで反応されていましたね。
恐らく、1回ご覧になっただけでは、すべてのギャグを把握することは出来ないと思います。
いつも稽古を見学していた立川らく太君も、「見る度に、面白さが増していく作品ですね!」と言って、必ずクスクス笑っていました。
逆に、社会情勢に詳しくない方でもお楽しみ頂けるよう、ダイナミックな演出を施しておきました。
体力的にも、技術的にも、相当難しい演技を要求する物になっています。
事実上、本格的なセリフ劇に初めて挑戦する2人には、荷が重すぎる演出だったかもしれません。
しかし、大きい演技を練習することが、役者としてのポテンシャルを上げる近道だと、僕は思っています。
ですから、無理を承知で、頑張って貰うことにしたのです。
2人とも、稽古期間中、相当苦しんでいましたね。
「舞台上を歩くのが、こんなに難しいのか!」と痛感したように、本当にすべてのことを一から学んでいく日々が続いていきました。
稽古後は、全身筋肉痛!
朝、足が攣って目が覚めるような状態だったようです。
当然、精神的にも、かなりきつかったのではないでしょうか。
しかし、内田君も塩沼さんも強靭な意志の持ち主です。
怯むことなく、僕の稽古に立ち向かっていきました。
また、2人で頻繁に自主稽古を行っていたようです。
その甲斐あって、本番当日には、立派に仕上げてきましたね。
素晴らしいエネルギーとエモーションだったように思います。
僅か3ヶ月の稽古で、あそこまで演技が出来るようになるなんて、普通では考えられません。
本当に立派だと思います。
今後、この2人がどのように成長していくのか、僕も楽しみです。
●「きになるひと」
公演タイトルでもある”STOP!温暖化”の精神を、最も体現している社会風刺コントです。
出演は、立川らく太、池戸美香です。
らく太君は落語家、池戸さんはフリーアナウンサーとして活躍中です。
ですから、舞台経験は豊富で、貫禄さえ感じさせます。
余裕の演技を見せてくれました。
「きになるひと」は、シュールでナンセンスなお話です。
かなりブラックな内容のため、ストーリーをここで紹介することは、はばかられます。
簡単に言えば、「ダメ亭主は木に変えてしまって、CO2を吸収してもらい、少しは世の中の役に立って頂こう!」というモノです。
我ながら、恐ろしい作品です。
「きになるひと」は、本当に良く受けましたね。
客席は、爆笑に次ぐ爆笑に包まれました。
実は、この作品には、どなたにでも楽しんで頂ける分かりやすいギャグを、大量に盛り込んでおきました。
それが全てスベることなく、見事にはまっていました。
また、この作品は、滑稽な動きが見どころなんですよ。
2人の役者さんともに、それを上手くこなして、明るい雰囲気を作ってくれました。
やっぱり、コントは、役者の力がモノを言います。
素晴らしい上演でした。
僕自身は、この作品のラストの物悲しい感じが大好きです。
笑いながらも、男の悲哀を痛感出来る、稀有な作品だと思います。
滑稽な姿で溶暗していくらく太君の姿は、まさに絶品でした。
●「ボクサー」
公演の後半は、しっとりした作品が続きます。
「ボクサー」は、内田諭、塩沼千雅による2人芝居です。
僕は、週に数回、運動不足解消のため、北澤ボクシングジムに通っています。
ジムのスタッフの皆さんは、常々ぷにぷにパイレーツを応援して下さっていて、毎回見に来て下さいます。
(その手厳しい批評が、案外参考になるものなんですよ)
そんな北澤ボクシングジムのマネージャーが、「ボクシングの芝居をやってよ!」とリクエストを出して下さいました。
ご期待に沿うべく書いた作品が、「ボクサー」なのです。
とは言っても、舞台上でボクシングの試合を再現しても、陳腐なものになってしまいます。
ですから、試合に敗れ、引退を決意したボクサーを主人公に設定してみました。
体も心も傷付いたボクサーと、彼を支えようと必死に励ます彼女の心の触れ合いをテーマにした作品となっています。
「ノーモア納豆」と違い、抑えた演技を要求される作品ですので、出演者2人は、これまた相当苦労した筈です。
でも、キャラクターそのものは等身大だと思いますので、感情面では入りやすかったのではないでしょうか?
気持ちのこもった芝居を見せてくれました。
「ボクサー」は、お客様にも大好評でした。
かなり大勢の方が、客席で泣いていらっしゃいました。
相当深いレベルで、登場人物に感情移入されていたみたいですね。
ありがたいことです。
僕は、勝者には興味がありませんし、ハッピーエンドというものを信じていません。
戦いに敗れ傷付きながらも、さらに立ちあがっていく人間の生き様を描くのが、自分の使命だと思っています。
そういった意味で、「ボクサー」は、極めて僕らしい作品ですね。
役者によってまた味わいが変わってくると思いますし、古びてしまう作品でもないので、機会があれば再演してみても面白いかもしれません。
●「雪だるま」
公演のラストとして、石崎一気による一人芝居を上演しました。
父の仕事が忙しすぎて、息子との関係がぎくしゃくしている親子。
クリスマスイブも、結局、大喧嘩をしてしまった…。
果たして、父と子の心が通じ合うことはあるのだろうか…。
(12月23日に、横浜・吉野町市民プラザで上演する予定なので、これ以上詳しいことはお伝え出来ません)
パントマイム演技を軸にした、静かでストイックな作品です。
しかし、本当に多くのお客様が泣いて下さいましたね。
アンケートに、「涙がとめどなく流れました」「涙腺が崩壊してしまいました」といった感想をお書きになった方が、大勢いらっしゃいました。
また、「綺麗な舞台でしたね!」とのお褒めの言葉、も沢山頂戴しました。
僕の得意とする小さな小さな世界ですが、ご覧になった方には、その向こうに無限の世界が広がって見えたのかもしれません。
ご自分の体験とオーバーラップさせて、熱い感動にひたっていらした方が、多かったのではないでしょうか?
僕自身が思っているより、相当パワーを持った作品なんですね。
作品の実力は、実際に上演してみないと分からないものです。
僕は、毎回、色々なことをお客様に教えて頂いているんですよ。
●「ヴァレンタイン・チョコ」
劇団ぷにぷにパイレーツ名物、アンコール作品です。
内田諭と塩沼千雅による、2人コントです。
基本は、お客様にアンケートにお答え頂けるよう、お願いする内容です。
それを、ヴァレンタイン・チョコを待つ男の子と、照れながら渡す女の子の甘酸っぱい想いでコーティングしてみました。
実は、この脚本は、2010年初頭に開催した「ぷにぷに演劇ワークショップ」で使ったテキストを改稿したモノなんです。
(ワークショップ用に書き下ろした脚本が、こんな形で役に立つとは!)
このコントも、良く受けましたね!
笑いの連鎖反応が起こっていましたよ。
2人の可愛いキャラクターがピッタリだったのが勝因かもしれません。
僕も、楽屋で、爆笑していました。
お陰様で、ほぼ全員のお客様に、アンケートにご協力頂きました。
この場をお借りして、御礼申し上げます。
今後の作品作りの参考にさせて頂きますね。
*「ぷちぷちパイレーツ”STOP!温暖化」ドキュメント
11月28日(日)の本番当日は、出演者・スタッフともに、午前10時に劇場集合ということになっていました。
ところが、1人の出演者を除いて、みんな9時30分には劇場に入っていました(その1人とは、一体誰でしょう?)。
少しでも多く、本番用の舞台で、場当たりや稽古をやりたいという気持ちだったようですね。
いつものように、まずは、灯り作りから始めます。
今回は、長身の内田君がいるので、天井に吊ってある照明機材の調整も楽々出来ました。
続いて、照明・音響担当スタッフと、きっかけ部分の確認です。
劇団ぷにぷにパイレーツは、照明や音響になるべく頼らないことをモットーにしています。
ですから、作品のオープニングとエンディングに、幕の代わりのような形で使うだけに留めています。
照明・音響スタッフは、2人ともぷにぷにの公演に慣れていますので、これもすぐに終了しました。
今回は珍しく時間にゆとりがあったので、本番同様に全作品を通すゲネプロが出来ました。
舞台上での演技は勿論、出はけや、衣装替え、スタッフ・ワークの部分まで、各自でチエックしていきます。
これまで1回も通し稽古をやったことがないというのに、いきなりのゲネプロで、ほぼ問題なく通すことが出来ました。
みんな、全体を俯瞰したイメージを、きちんと持てていたということなんでしょうね。
通した時間も約80分で、理想的な尺となっていました。
昼食休憩を取ると、13時を回っていました。
慌てて、客席作りに取り掛かりました。
マチネはお客様をお断りする程、予約が殺到していました。
ですから、立ち見が出ないように、工夫を凝らしてスペースを作らざるをえませんでした。
みんなで知恵を出し合って、なんとか予約人数分の座席を確保することが出来ました。
開場時間の13:30に劇場の外に出たところ、扉の前に、お客様の行列が出来ていました。
こんなことは、劇団創設以来、初めてです。
順調にお客様にご入場頂き、定刻通り、14:00にマチネを開演いたしました。
満員のお客様の暖かい応援に支えられ、滞りなく、90分で全作品の上演を終えることが出来ました。
マチネのお客様は、感受性豊かな方が多かったのかもしれません。
コントより、しっとりした作品の方が、リアクションが大きかったように思いました。
「ボクサー」や「雪だるま」を上演している時、本当に沢山の方が、美しい涙を流されていたようです。
場内のあちらこちらから、鼻を啜る音が絶え間なく聞こえてきました。
決して泣いて頂こうと思って書いた作品ではないのですが、きっと何かを感じて下さったんでしょうね。
光栄なことです。
15:30にマチネを終え、ソワレの開場まで約2時間、空き時間となりました。
1公演終わった安心感でリラックスする人もいれば、上手く出来なかった部分を繰り返し練習する人、脚本に立ち返り再度セリフをチェックする人と、その時間の過ごし方は様々でした。
差し入れで頂戴した蜂蜜漬けレモンや巨大どら焼きで、お腹を満たす人もいましたね。
17:00から、再び、ソワレ用の客席作りを行いました。
今度は、普段のぷにぷにパイレーツの公演と同じぐらいのお客様の数です。
劇場規模からするとこちらの方が適正数でしょうから、ゆったりとしたレイアウトとなった筈です。
17:30に開場しました。
いつもソワレは開演直前に駆け込んでいらっしゃる方が多いのです。
ですから、定刻より5分押して、18:05に開演しました。
夜の部は、昼の部に増してアットホームな雰囲気に包まれ、前説の段階から笑いが巻き起こっていました。
ですから、「ノーモア納豆」や「きになるひと」で爆笑の連鎖反応が起こり、大いに盛り上がっている感じになりました。
2回目の上演なので、役者達の緊張が少し緩み、笑いやすい雰囲気になったのも事実です。
良い雰囲気のまま、19:30に「ヴァレンタイン・チョコ」の上演を終えることが出来ました。
すべてのお客様がお帰りになられると、すぐに撤収作業に掛かりました。
劇場に関しては、椅子と座布団を片付けるだけですから、あっという間に作業は終了します。
記念撮影などを行った後、20:30には、アトリエ無現を退出しました。
そして、みんなが楽しみにしていた打ち上げに突入です。
熱い想いを持ったメンバーが興奮状態にありますから、まあ喋る喋る!
(感激のあまり、またまた涙をこぼすキャストも…)
あっという間に、終電の時間を迎えたのでありました。
関係者一同にとって、決して忘れられない一日となったことと思います。
願わくば、お客様にとっても、そうでありますように…。
*予告編動画(下記をクリックして、ご覧下さい)
2010年9月 6日 09:32 | カテゴリ:公演案内