第12回公演「ぷにぷに!赤いカーニバル」
(最新更新日:2011年7月28日)
*公演日: 2011年7月3日(日曜日)
*開演時間: 14:00 & 18:00(開場は、開演の30分前)
*会場: アトリエ無現(田園都市線・駒沢大学駅東口より徒歩7分)
世田谷区野沢2-26-22川又ビルB1
*キャスト
作・演出・出演: 石崎一気
キーボード演奏: Sachiko
制作: じゅん
*公演コンセプト
今回の公演タイトルを、なぜ、”ぷにぷに!赤いカーニバル"というタイトルにしたのか?
それは...、僕が...、プロ野球・広島カープの大ファンだからです!
1975年、球団初の外国人監督、ジョー・ルーツが就任した広島カープは、燃える闘志を表す意味を込めて、帽子やヘルメットの色を赤にしました。その効果もあってか、前年まで3年連続最下位だったカープは、中日や阪神と熾烈な優勝争いを繰り広げ、遂に1949年の球団創設以来初となる悲願の優勝を果たしたのです。もちろん、首位打者となった山本浩二、最多勝の外木場義郎、盗塁王に輝いた大下剛史らの活躍があればこそですが、チーム・カラーの変更が選手たちの負け犬根性払しょくに繋ったことも、間違いありません。それ以降、カープは、球団史に残る黄金時代に突入。初優勝から1984年までの10年間で、4度のリーグ制覇、3度の日本一に輝きました。日本のプロ野球界に、"赤ヘル旋風"が巻き起こったのです。
"赤"の効果があったのは、チーム成績の面ばかりではありません。空席が目立った広島市民球場のスタンドが、"赤ヘル"になってからは、連日、押すな押すなの大入り満員!チケットを確保するのが、大変難しくなりました。初優勝を記念した平和大通りのパレードには、約30万人の市民が参加。「♪ 川が育てたこの街は、ドント、カープでなけりゃ、夜も日も明けぬ」と歌われる程、人気の高い市民球団になっていったのです。
毎年のように最下位に低迷し、「セリーグのお荷物球団」と呼ばれた広島カープが、チーム・カラーを赤に変えることによって、球界の盟主にまで上り詰めた...。その故事にあやかり、このたび、我々"ぷにぷにパイレーツ"も、劇団カラーを"赤"に変更することにいたしました。その嚆矢となるのが、今回の「ぷにぷに!赤いカーニバル」という訳です。これで、今後、我々が上演する作品は、すべて好評を博すること間違いなし!観客動員数の大幅アップも確実!演劇ファンなら知らぬ者はない有名劇団への仲間入りは、時間の問題だと思われます。
しかーし、蓋をあけてみると、客席は恐ろしいことに…!
収支を計算してみたら、驚くほど「赤いカーニバル」になっていました。
トホホホホ…。
*上演作品
①サスペンス劇「ずっと一緒に」

一人芝居には、重大な欠点があります。
それは、舞台上に、セリフを聞く人がいないということです。
ですから、主人公のセリフは、単なる独り言か、観客には見えない誰かに向けられたものになってしまいます。
シェークスピアの作品などには随所に独り言が出てきますが、リアルな演劇を追求するには非常に不自然な状態とです。
僕自身、作品を作っていて、その違和感に、いつも悩まされてきました。
「普通の人なら、この場面で、こんな説明的な事は言わないよなあ…」なんて思い続けてきたのです。
一人芝居ならではの悪しき特徴を長所に変え、効果的に見せる方法はないか、僕は常々考えてきました。
その一つの回答が、「ずっと一緒に」という作品なんです。
一人芝居の弱点を逆手に取り、先入観を持った観客を、構造的に騙していこうという趣向になっています。
要は、一人芝居でなければ実現出来ない”どんでん返し”を楽しんで頂こうというモノなのです。
ポイントは、序盤の芝居に、どれだけのリアリティを持たせるかにありました。
観客がそれを信じてくれないと、”落ち”がまったく効きません。
とにかく、起承転結の”起”の部分を丁寧に演じることに、意識を傾けました。

粗筋は、こんな感じです。
”ある安宿の一室。
怯えきった男が一人、ハサミで髪を切っている。
男は、ある施設を逃げ出してきたばかり。
脱走を手伝った兄がその部屋を訪れた時、恐ろしいことが…”

かなり複雑な構造を持った作品です。
「演劇を見慣れてないお客様は、混乱してしまうかなあ?」なんて思っていましたが、そんな方は少なかったようですね。
(なかには、昼・夜2回見て、やっと把握出来たお客様もいらっしゃったようですが…)
皆さん、30分間集中して、最後までしっかりご覧下さったようです。

特に、想像力豊かな方や、ホラー好きの方には、喜んで頂けたみたいですね。
「怖かった」「本当に気持ち悪かった」「静かな弟の方が怖い」「自分の中にも、兄がいるような気がする」といった感想が、伝わってきました。
純粋にストーリーを楽しんで貰えたようです。
構造上の罠を疑問視する方は、一人もいらっしゃいませんでした。
(「これって、ずるいよ!」と思われる可能性も感じていましたので、安心しました)
序盤の“騙し”が、まずまず上手くいったということなのでしょう。
かなり実験的性格を持ち合わせた作品だったにもかかわらず、一定の評価を得ることが出来たのは、誠に嬉しいことです。
今後も、演劇の新たなる可能性を求めて、チャレンジを続けていきたいと思っています。

②パントマイム劇「地下室」

昨年の「蝶」に続き、パントマイムを見せることを主眼とした小品を考えました。
セリフを必要最小限にとどめ、ストーリーよりも、動きそのものを楽しんで頂ける作品を構想しました。
それが、今回、2本目に上演した「地下室」です。
パントマイムと言えば、やはり“壁”ですよね。
僕は、その”壁”のテクニックを前面に押し出した作品を作ってみたいと、ずっと思い続けてきました。
ピエロやクラウンを演じる方々は、”四方を不思議な壁に取り囲まれ困る”シチュエーションを、良く演じられます。
僕は、その状況を、もっとドラマチックに、緊張感一杯に仕上げてみようと考えてみました。

”天井が崩れ落ち、階段は土砂に埋まり、床は瓦礫に埋め尽くされた地下室。
男は、地上への出口を求めて、決死の行動を取る…。
ようやく活路を見出した男が知った、衝撃の事実とは…?”

終末観漂うSFタッチな作風ではあります。
でも、良く見ると、はっきりしたストーリーはありません。
結末も曖昧な状態にとどめてあります。
主人公に、人間的な成長や葛藤も見られません。
あくまで、動きをご覧頂く為の作品なのですから。

僕が狙ったのは、壁の触り分けです。
何通りもの壁の表現を試してみました。
壁の位置、質感を描くことも大切ですけど、壁を触ることで主人公の心理状態を表現出来るよう努力してみたつもりです。
しかし、結局、お客様は、ストーリーや作品の世界に没入されていたようです。
「手に汗を握った」「怖かった」といった意見が多く聞かれました。
なかには、「(辛くて)涙が出た」という方もいらっしゃいました。
きっと、主人公に感情移入されたんでしょうね。
想定を上回る好評ぶりに、僕はとても満足しています。

もちろん、”壁”のマイムを楽しんで下さった方も、少なくなかったようです。
「本当に壁があるみたいに見えたから、舞台に上がってノックしてみようかと思ったよ!」なんて、嬉しいことを言ってくれたお客様もいらっしゃいました。
また、「もっと、マイム作品を増やしてよ!」という声も聞かれました。
光栄なことです。
僕のパントマイムはまだまだ未熟ですが、もっとお客様に喜んで頂けるよう、地道に練習を重ねていきたいと思っています。
③人間喜劇「魔術師」

「ぷにぷに!赤いカーニバル」の前半2本は、かなりマニアックな内容となりました。
公演の最後だけは、演劇に馴染みのない方でも楽しんで頂けるような、万人向けの作品を上演することにいたしました。
それも、明るく笑って劇場を出られるような、ポジティヴで前向きな作品でなければいけません。
そこで考えたのが、「魔術師」です。
まずは、コミカルな手品のシーンを思い付きました。
パントマイムを前面に押し出し、インチキ手品を繰り広げるというモノです。
これは、いくらでも面白いことが出来そうでしたけど、手品をやっているだけだと小品の域を出ないような気がしてきました。
笑いを目的にしたのでは、公演のラストを飾る大作にならないんです。

そこで、手品シーンに、こんなストーリーを付け足しました。
”馬車で全国を巡業する魔術師。
心臓に病を持ち、余命いくばくもない。
しかし、舞台のためなら命を捨てても惜しくないと思っている。
魔術師一行は、各地で、子どもたちから喝采をもって迎えられている。
ある日のこと、公演が終わっても一向に帰ろうとしない、寂しそうな少年がいた。
その少年が、魔術師に語ったのは、悲しい物語だった…”
結果的に、「魔術師」は、優しさと愛を伝える感動作になってしました。
ラストの長科白のスケールの大きさといったら、どうでしょう!
書いた自分ですら、ビックリしています。
人生を肯定するような、美しいシーンになったような気がしています。
お客様からは、「感動した」「泣いた」「私にも、奇跡は訪れるのだろうか?」といった声が、沢山届きました。
笑って頂く為に作った作品ですが、実際には、観客を泣かせてしまったようですね。
一応言っておきますけど、もちろん、手品シーンでは、爆笑が巻き起こりましたよ!
感動の方が印象が強かったということなのだと思います。

「魔術師」で使う音楽は、すべて、プーランク作曲のもので揃えました。
演奏の評判も上々でしたね。
プーランクの音楽なくして、この作品は成立しなかったように感じています。
日本ではあまり知られていないプーランクを皆様に紹介できて、本当に良かったと思っています。
「魔術師」は、劇団ぷにぷにパイレーツ史上、最も評判の良い作品となりました。
僕がやりたいことと、お客様が求めるものが、上手く噛み合った作品なのだと思います。
このバランスこそ、公演成功の最大の秘訣なのだと思います。
今後も、各公演に1本は、そんな作品を入れていくつもりでおります。

*お客様の感想
「ぷにぷに!赤いカーニバル」のアンケートに見られた感想を、幾つかご紹介させて頂きます。
最も多かったのは、こんなご意見です。
「ピアノの生演奏が素敵です」
「演奏と芝居が、良く合っていました」
「ピアノに、音の意味を聞きました」
「選曲が良かったです」
芝居とピアノのコラボレーションが、非常に好評でしたね。
2人の息が合っているところ、シーンと曲が合っているところなど、沢山褒めて頂きました。
演劇に詳しい人は、メロディに、セリフや動きをピッタリ当てていることにも、気付いていらっしゃいました。
(シェーンベルクの前衛的な曲に動きを合わせる難しさや、プーランクのダイナミックな展開のメロディにセリフを付ける厳しさをご理解頂ければ、もっと作品が楽しめたかもしれませんよ)
すべては、Sachikoさんの演奏のお陰です。
いくら感謝しても足りませんね。
「パントマイムが素敵でした」
「動きが綺麗でした」
「動作が美しく、魅せられて、見せられてしまいました」
「小道具や舞台上の装飾がないのに、演技で表現できるのは素晴らしいと思いました」
その他、僕の動きを褒めて下さった方も大勢いらっしゃいました。
一所懸命、マイムを練習した甲斐があったというものです。
でも、自分としては、まだまだです。
ますます磨きをかけていかなくては!
「魔術師、楽しかった!」
「魔術師の子どもへの優しい教えに、心温まりました」
「ラストで、泣いてしまいました」
「子どもとのやりとり、魔術をかけてから、感動しました」
「世界は魔術に満ち溢れている!私にはどんな奇跡が起きるかな?」
「(客席に)本当に魔法にかけられた人が、沢山いると思います」
などなど、”魔術師”で感動して下さった方が大勢いらっしゃったようです。
「可笑しかった」という人より、「泣けた」という人の方が多かったのは、意外な気がしました。
やはり、公演のラストは、お客様に愛をいっぱいお届けするのが良いようです。
「怖かった」
「前半の2つ、怖すぎる」
「期待通りの、気持ち悪さでした」
「変身してから、恐ろしかったです」
「兄より、弟の静かな気持ち悪さが良かったです」
「自分の中にも”お兄ちゃん”がいそうな予感が…」
「自分の弱いところに、ずんずん迫ってきました」
ホラー&サスペンス・タッチの前半を気に入って下さった方も沢山いらっしゃいました。
こういった作品は、好きな方はお好きですよね。
もちろん、僕も大好きです。
まだまだ、ホラーは追求していきますよ。
今回も、アンケートの回収率は、ほぼ100%でした。
皆様、ご協力ありがとうございました。

*Sachikoプロフィール
武蔵野音楽大学ピアノ科卒業
(在学中、創立者・福井直秋記念奨学生)
劇団四季音楽スタッフ、ヤマハ音楽教室講師を経て、現在はクラッシック、
シャンソン、カンツォーネ等声楽の伴奏や、プレイヤー活動を行う。
自身の音楽教室も開講し、後進の指導にも当たっている。
*予告編動画
2011年4月20日 07:17 | カテゴリ:公演案内